生成AI『Adobe Firefly』とは?機能や特徴を詳しく解説
2023/12/06
今、生成AI(ジェネレーティブAI)への関心が世界的に高まっています。生成AIを導入し、ビジネスを効率化したいという方もいるのではないでしょうか。
Adobeが2023年9月に製品版を発表したクリエイティブ向けの生成AI、Adobe Fireflyも大きな話題となっています。デザインスキルを持たない方でも、インテリア・建築デザイン、Webサイト制作、広告デザイン、ゲーム開発など、さまざまな分野でアイデアを形にすることが可能です。
この記事では、Adobe Fireflyの特徴や機能、活用事例について紹介します。
生成AI『Adobe Firefly』とは?
生成AIの登場によって、ビジネス環境は大きく変化しつつあります。簡単なプロンプトを入力するだけで、さまざまなコンテンツを自動で生成できるため、従来は難しかったクリエイティブな作業もAIに置き換えることが可能です。
ここでは、生成AIの仕組みや導入するメリット、世界的に注目を集めるAdobe Fireflyの特徴を解説します。
生成AIとは?
生成AIとは、ジェネレーティブAIとも呼ばれ、AIを活用してテキストや画像、音声、動画などのオリジナルコンテンツを生み出す技術を指します。
従来のAIは、与えられた学習データを活用し、データの傾向を分析したり、結果を予測したりするために使われていました。しかし、生成AIは入力されたプロンプト(指示)に沿って、全く新しいデータを生成できるのが特徴です。
生成AIがオリジナルのコンテンツを生み出せる理由は、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる技術にあります。ディープラーニングは、与えられた学習データだけでなく、AIが大量のデータを自動で学習していく技術です。
生成AIでは、インターネット上のデータなどを大量に学習し、膨大なパターンを組み合わせて新しいコンテンツを生み出します。生成AIの使い方によっては、クリエイティブな作業をAIに置き換えることも可能です。
Adobe Fireflyとは?
生成AIの中でも、オリジナルの画像やイラストを生成できるAIを「画像生成AI」と呼びます。今、画像生成AIの中でも大きな注目を集めているのが、Adobe Fireflyです。
Adobe Fireflyの強みは、デザインスキルがない方でも、クリエイティブな画像やイラストを制作できる点です。他の画像生成AIと違って、自社のAdobe Stockのデータを学習しているため、著作権の問題をクリアできます。
制作したコンテンツは商用利用が可能で、自社の広告やWebサイト、建築デザイン、ゲーム開発などに使用できます。2023年3月にベータ版がリリースされて以来、Adobe Fireflyはクリエイティブ向けの生成AIのスタンダードになりつつあります。
Adobe Fireflyに搭載されている主な機能
現在(2023年11月)利用可能な Adobe Fireflyの 主な機能は以下の2点です。
- ・テキストから画像生成
- ・生成塗りつぶし
Adobe Fireflyは、Firefly Web版から利用可能です。また、 Adobe PhotoshopやAdobe Illustrator、Adobe ExpressにもFireflyが 組み込まれているため、それらライセンスをお持ちの方は製品上でFirefly機能を 利用できます。2つの機能の特徴や使用方法を紹介します。
テキストから画像生成
Adobe Fireflyの「テキストから画像生成」は、AIへの命令(プロンプト)をテキストで入力し、画像を生成する機能です。テキストプロンプトを入力すると、一度に4つの画像が生成されます。
画像のひとつを選んで「似た画像を生成」のボタンをクリックすると、類似した画像をさらに生成することが可能です。
テキストプロンプトの入力から画像の生成までの時間は、わずか数秒しかかかりません。テキストプロンプトを適切に入力すれば、デザインの経験がない方でも、本職のデザイナーに匹敵するクオリティの写真やイラストを作成できます。
「テキストから画像生成」の機能は、Adobe Firefly Web版 の他、Adobe Expressでも利用可能です。生成した画像は、SNSに投稿する画像、チラシやDMのイラスト、Webサイトのバナーなど、幅広いシーンで活用できます。
生成塗りつぶし
「生成塗りつぶし」は、Adobe Photoshopなどで利用できる機能です。ブラシを使って写真やイラストの範囲を指定し、テキストプロンプトを入力すると、その部分に新しいオブジェクトを追加できます。「テキストから画像生成」と違って、既存の画像の編集や微調整に役立つ機能です。
例えば、「縦長の写真の横に余白を追加し、背景を生成して横長の写真にする」「人物の衣装だけを別のものに変える」といった使い方ができます。イラストや写真に不要な部分がある場合は、削除したり、別のオブジェクトに置き換えたりすることも可能です。
新たに編集した場所は、オブジェクトの影や光の反射、遠近感なども含めて、違和感のない仕上がりで表示されるため、手直しもほとんど必要ありません。
Adobe Fireflyを活用するメリット
Adobe Fireflyを活用するメリットは以下の3点です。
- ・商用利用が可能な設計
- ・Creative Cloud ワークフローへシームレスに統合可能
- ・今後も新しい機能が追加される
Adobe Fireflyは、他の画像生成AIと違って、安心して商用利用ができる設計になっています。また、Creative Cloudなどのツールと組み合わせ、チームの共同作業を効率化することも可能です。
今後も新しい機能がどんどん追加されていくため、アップデートを確認しましょう。
安心して商用利用できる設計
画像生成AIの課題のひとつが、著作権問題でトラブルにつながるリスクです。インターネット上の画像を学習した生成AIの場合、学習データに使用許諾のない画像が含まれ、商用利用することで他者の著作権を侵害してしまう可能性があります。
Adobe Fireflyであれば、安心して商用利用ができる設計となっています。 Adobe Fireflyでは、Adobe Stockに登録された使用許諾済みの画像や、著作権が切れたインターネット上のコンテンツを学習データに利用しています。その ため、著作権を侵害するリスクは設計上ありません。
また、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)と協力し、コンテンツの作成者を識別するための認証情報を追加する取り組みも行っています。
Creative Cloud ワークフローへシームレスに統合可能
Adobe Fireflyは単体で動作するWebアプリですが、Creative CloudやDocument Cloud、Experience Cloudの各ツールにも組み込まれています。例えば、PhotoshopやIllustrator、Adobe Express、Adobe Stockなどがその一例です。
すでにCreative CloudやDocument Cloudを使用したワークフローを確立している場合、業務の流れを大きく変えず、シームレスにAdobe Fireflyを活用することができます。今後、Adobe Fireflyは他のCreative Cloudアプリにも追加されていく予定です。
今後も新しい機能が追加される
Adobe Fireflyは2023年3月にベータ版、9月に製品版がリリースされてから、さまざまな機能が追加されてきました。「テキストから画像生成」や「生成塗りつぶし」の他にも、以下の機能が利用できます。
機能 | 特徴 |
---|---|
テキスト効果 | テキストにエフェクトを適用したり、テキスチャを貼り付けたりして、テキスト効果を追加する |
生成再配色 | 既存の画像やイラストのカラーバリエーションを変更する |
また、Adobe MAX 2023で発表された「テキストからベクター生成」 や、現在開発中の機能として、3Dモデルを読み込んで画像を生成する「3Dから画像生成」、画像の縦横比をワンクリックで変更する「画像を拡張」などがあります。今後もAdobe Fireflyには新しい機能が追加され、どんどんできることが広がっていきます。
画像生成AI『Adobe Firefly』の活用事例
Adobe Fireflyをはじめとした画像生成AIは、主に4つの分野で活用されています。
- ・インテリア・建築デザイン
- ・Webサイト制作
- ・広告デザイン
- ・ゲーム開発
建築デザインの検討やWebサイト用のイラスト作成、広告用の写真加工、ゲームの背景やテクスチャ素材の生成など、さまざまな用途にAdobe Fireflyを活用できます。
インテリア・建築デザイン
Adobe Fireflyは、インテリアや建築デザインの検討や、プレゼンテーション資料の作成に利用可能です。
例えば、「テキストから画像生成」の機能を使って、さまざまなテキストプロンプトを入力し、デザインアイデアのブレインストーミングに活用できます。デザインの一部を変更したい場合は、「生成塗りつぶし」の機能を活用して、不要な部分を削除したり、別のオブジェクトに置き換えたりすることも可能です。
また、Adobe Fireflyはプレゼンテーションの際の挿絵やイラスト、イメージ図などの作成にも役立ちます。
Webサイト制作
Webサイト制作は、画像生成AIの活用が急速に進んでいる分野です。例えば、Adobe Fireflyを活用すれば、ロゴやバナー、写真、イラストなどの作成を効率化し、Webサイト制作の工数を削減できます。Adobe Fireflyなら、テキストプロンプトを入力するだけで画像を生成できるため、プロのデザイナーに依頼する必要もありません。
また、Adobe Fireflyの「生成再配色」機能を使えば、既存の画像のカラーバリエーションを変更できます。「スマートフォンの画面で見たら、配色がイメージと違った」というケースでも、ボタンひとつで微調整することが可能です。
広告デザイン
広告デザインの分野でも、Adobe Fireflyが活躍しています。例えば、以下の用途が考えられます。
- ・バナーやポスター に使う写真をAdobe Fireflyで生成し、撮影セットにかかるコストを削減する
- ・商品画像の背景を編集し、季節に合わせた変化をつける
- ・SNSアカウントのロゴや、投稿用のアイキャッチ画像を自動で作成する
ストックフォトサービスを利用する場合と比べて、Adobe Fireflyはプロンプトを微調整し、さまざまなパターンのクリエイティブを用意できるのが強みです。そのため、CMの制作現場などでも、アイデア出しやブレインストーミングに画像生成AIが使われるようになりました。
ゲーム開発
Adobe Fireflyは、ゲーム開発にも利用可能です。ゲーム開発では、キャラクター、背景、オブジェクトなど、さまざまなグラフィックを制作します。Adobe Fireflyを活用することで、ゲームグラフィックデザイナーの負担を減らし、開発工数を削減できる可能性があります。
特にAdobe Fireflyの応用が期待されているのが、ゲーム背景やテクスチャ素材の生成です。例えば、木や石のようにパターンが比較的単純で、学習データが豊富なグラフィックであれば、Adobe Fireflyを使うと数秒で生成できます。
一部のグラフィックデザインをAdobe Fireflyが担当し、キャラクターの表情などをゲームグラフィックデザイナーが作り込むことで、社内のリソースを効率的に活用できます。
Adobe Fireflyのプラン
Adobe Fireflyは無料でも利用できますが、月間のコンテンツ生成回数(生成クレジット)に制限があります。Creative Cloudの有料サブスクリプションを契約している場合は、生成クレジットを増やすことが可能です。
より多くのコンテンツを生成したい場合は、Creative Cloudの単体プランやコンプリートプラン、Adobe Expressのプレミアムプランなどを利用しましょう。
Adobe Fireflyは無料でも利用できる
Adobe Fireflyは、無料で利用できる画像生成AIです。初めて画像生成AIを導入する方や、Adobe Fireflyの使い勝手を確認したい方は、まず無料プランから始めてみましょう。
ただし、Adobe Fireflyの無料プランは、毎月の生成クレジットの数が25回に制限 されています。
生成クレジットが消費されるタイミングは以下のとおりです。
機能 | 生成クレジット |
---|---|
テキストから画像生成 | 1回 |
生成塗りつぶし | 1回 |
生成再配色 | 1回 |
テキスト効果 | 1回 |
生成クレジットが上限に達してもコンテンツの生成自体は可能ですが、作業中の速度が低下します。生成クレジットを増やしたい場合は、有償のCreative Cloudを契約しましょう。
有償のCreative Cloudを利用中ならさらに便利に
有償のCreative Cloudを契約すれば、月間の生成クレジットが増加し、もっと便利にAdobe Fireflyを利用できます。 Adobe Express や、Creative Cloudの単体プラン、コンプリートプラン の場合、生成クレジットをさらに獲得できます。
プラン | 生成クレジット |
---|---|
Adobe Express | 250回 |
Creative Cloud 単体プラン (Illustrator、InDesign、Photoshopなど) |
500回 |
Creative Cloud コンプリートプラン | 1,000回 |
Adobe Fireflyで創造性を高めよう!
画像生成AIの中でも、世界的に注目を集めているのがAdobe Fireflyです。Adobe Fireflyは商用利用が可能な設計の ため、自社の広告やWebサイト、建築デザイン、ゲーム開発など、幅広いビジネスシーンで活用できます。
Creative Cloudとシームレスに連携できるため、チーム内で使うツールを一本化し、共同作業を効率化することも可能です。
プランによって月間の生成クレジットが決まっているため、Adobe Fireflyの利用頻度に応じて、Adobe Express や、Creative Cloudの単体プラン、コンプリートプラン などからプランを選択しましょう。